同じ頃。

「はっ？」

そう聞き返した奈帆に、
「だから、１回だけでもいいから相馬さんと話しあいをした方がいいんじゃないかと思うんだ」
と、哲郎は先ほど言ったばかりのセリフを彼女に言った。

本社で会議があると言う見張り役の川西がいなくなり、哲郎が戻ってきた。

自分が在庫確認をするために裏へ向かったそのタイミングを待っていたと言うように、哲郎がその後を追いかけてきた。

「相馬さんのことについてなんだけど…」

哲郎がそう前置きをしたかと思ったら、先ほどのセリフを言ったと言う訳である。

「何で私があいつと話をしないといけないのよ。

２４時間もひとつ屋根の下にいて嫌でも顔をあわせてるのに、何で話をしないといけないのよ。

あいつと話をすることなんて何もないんだけど」

言い終えると、奈帆はあからさまだと言わんばかりに息を吐いた。