これは哲郎の言う通りだと、青葉は思った。

今まで自分が奈帆にしてきた行いが原因だったとは言え、彼女は自分に恋愛感情を抱いていないのはもちろんのこと、1人の人間としても信用すらされていないんだと言うことを理解した。

しかし、
「こんなところでめげるものか」

つねられた手の甲と蹴られたすねの痛みに悲鳴をあげている場合ではない。

「しかし…好きになるよりも信じてもらう方がずっと先だな」

青葉は息を吐いた。

このままだと奈帆が心の底から望んでいる婚約破棄になってしまうのも時間の問題だろう。

「恩返しでの結婚か…」

哲郎が言っていたことを思い出して、青葉は呟いた。

奈帆がどうしてそんなことを言い出したのか、どう言う出来事があってそんなことを思ったのか…まずはそこから調べるのが先だろうなと、青葉は思った。