奈帆は青葉の手の甲をつねった。

「痛い!」

青葉が悲鳴をあげて腕の力がゆるんだその瞬間、奈帆はそこから抜け出した。

「気持ち悪いにも程があるのよ!

自分で言ってて恥ずかしくないのか!?

頭がおかしいって言うレベルじゃないわよ!」

奈帆はそう言うと、青葉のすねを蹴った。

「イデッ!」

手の甲とすねを擦っている青葉に、
「あんたがどう言おうと何を言おうと、絶対に婚約破棄をしてもらうから!

あんたが何に執着して何にこだわっているのかはよくわからないけれど、婚約は間違いだったと言うまで私は絶対にあきらめないから!」
と、奈帆は言った。

「あんたと別れるその日がくるのを楽しみに待っているから、以上!」

奈帆は言い終えると、青葉の前から立ち去った。

バタンと、奈帆の自室として使っている部屋のドアが大きく閉まった音が聞こえた。