「奈帆」

青葉が自分の名前を呼んだ。

「僕は君のことが好きだ」

「はあっ?」

何を言っているんだと言うように奈帆は聞き返した。

「あんた、自分が何を言ってるかわかってんの?」

奈帆がそう言えば、
「わかっているから言っているんだ」
と、青葉は言い返した。

「好きだけじゃ物足りない、愛してる」

「…バナナの皮で滑って頭でも打ったんか?」

何だこいつは…と言う視線を奈帆は青葉に向けた。

(と言うか、そんなにも婚約破棄をされるのが嫌なのか?

嫌だから今さらのように好きとか愛してるとか何か訳がわからないことを言って、どうにかして繋ぎ止めようってか?)

そこまでして自分に執着をしている青葉がよくわからないし、どうしてそんなにも自分にこだわっているのか全く理解ができなかった。