「好き」って言ってよ!

「そんな地元から出たくて“母親を楽にさせたい”と言う口実を使ってバイトをして、高校卒業と同時に家を出て地元を離れたと言う訳です。

それ以降は地元にも帰っていなければ母を始めとする人間は誰とも連絡をとっていない…と言う訳です」

川西の思わぬ身の上話に礼は何も言えなかった。

「あんな素敵な人と婚約して、そのうえあんなにも思われているというのに何で婚約破棄をしたがっているんですか?

あなたの行動が全く理解できないうえに、彼の気持ちを踏みにじっているその行為が私は気に食わないです」

そう言い返してきた川西に、
「そこまで言うか!?」

奈帆は思わず大きな声で聞き返した。

「踏みにじっているも何も、最初に私の気持ちを踏みにじってきたのは向こうの方よ!?

あきらかに私のことが嫌いなのに、婚約関係を続けていた向こうの方が全然理解できないわよ!」

奈帆は言い返した。