「好き」って言ってよ！

その日の夜、奈帆は仕事が終わると哲郎と一緒に実家へと向かった。

「お父さん、どう言うことなの！？」

父親がいるリビングに乗り込んだ奈帆は早速尋ねた。

「な、何が…？」

娘の勢いに気圧され気味になっている父親に、奈帆は今日起こった出来事を説明した。

「昨日、確かに婚約破棄をしたわよね！？

お父さんも彼が女を連れているところを見たわよね！？」

「そ、そうだが…」

「なのに婚約破棄をしていないどころか継続中だなんておかしいじゃない！？

これはどう考えても彼が勝手に言っているだけよね！？」

哲郎はこの状況をただ見ていることしかできなかった。

冷静に話しあうようにと言ったところで彼女が耳を貸さないのはわかっている。

「奈帆、そのことについてなんだが…」

「ーーそれに関しては、こちらの方から説明いたします」

口を開いた父親をさえぎるよに、第３者の声が入ってきた。