「奈帆ちゃん、落ち着いて」

哲郎が奈帆を慰めにかかった。

そんな彼らを樹里とエイジはお互いの顔を見あわせて、ひょっとこのように口を曲げることしかできなかった。

「婚約破棄を発表したから私は自由になれると思ったのにー!

長きに渡る忌まわしきこの因縁から逃れることができたと思ったのにー!

“相馬青葉の婚約者”だと言われた不遇な時代が終わると思ったのにー!」

「奈帆ちゃん、落ち着こうよ…。

そうだ、おじさんに確認をしてみようよ」

そう言った哲郎に突っ伏していた奈帆は顔をあげた。

「お父さんに確認する…?」

「おじさんだったら何かを知っていると思うし、もしかしたら間違いだと言ってくれるかも知れないよ」

そのとたん、奈帆の顔がパッと明るくなった。