自分の婚約者である相馬青葉（ｿｳﾏｱｵﾊﾞ）がようやくこの会場に現れた。

ところが紺色のスリーピーススーツがよく似合っている彼の隣にいたのは、青いマーメイドドレスを身に着けた長身の女性だった。

艶のある黒い髪を夜会巻きにしている彼女は、まるで淑女のようだと奈帆は思った。

「あ、あの方は一体…？」

「う、ウソでしょ…？」

「だって、相馬様の婚約者は…」

「ちょっと黙りなさい！」

まさかの展開に会場は不穏な空気に包まれた。

（今日は、婚約発表会見でしょう…？

どうして彼の隣に、私以外の女の人がいるの…？）

奈帆は震える唇を開くと、
「ーーそ、その方は…？」
と、青葉に質問した。

その質問に対して青葉は目をそらすと、
「ーーそう言うことだ」
と、答えた。