「えっ、奈帆ちゃん!?」

「店長、大丈夫ですか!?」

気を失って倒れていたはずの奈帆が休憩室から出てきていた。

「奈帆ちゃん、無理しなくていいよ。

倒れたばかりなのに…」

「もう大丈夫になったから」

声をかけてきた哲郎をさえぎるように言うと、奈帆は椅子に腰を下ろした。

「エイジさんも呼んできた方がいいですよね?」

そう聞いてきた哲郎に、
「そうですね。

弟はもう帰りましたし、この後に予約をしているお客さんはいませんから」

樹里は返事をすると、エイジを呼びに店内へと顔を出した。

エイジがきたので彼らは椅子に腰を下ろした。

「私と相馬青葉が婚約をした理由ーーそれは、昭和19年の太平洋戦争真っただ中にまでさかのぼる…」