「好き」って言ってよ!

だけど、それくらい青葉は自分のことを思っていてくれたのだろう。

川西のような美人秘書が隣りにいても、彼はそれ以上でもそれ以下でもないと言っていたくらいだ。

「奈帆」

青葉に名前を呼ばれたかと思ったら見つめられた。

「今度は何よ」

そう言った奈帆に、
「君からまだ名前を呼ばれていなかったなと思ったんだ」
と、青葉は言い返した。

「な、名前?」

そう言えば彼のことを1度も名前で呼んでいなかったなと奈帆は思った。

(“あいつ”とか“あの人”とか嫌っていたとは言え、確かに…)

「そんなにも呼んで欲しいの?」

今さらじゃないかと思いながら、奈帆は言った。

「奈帆に呼んで欲しい」

そう答えた青葉の顔は期待に満ちていた。