「それで犯人は捕まったんですか?」

そう聞いてきた樹里に、
「捕まらなかったみたい。

奈帆ちゃんも犯人の顔を見ていないそうだし、気がついた時には廃病院の中にいたって言うことだったみたい」
と、哲郎は答えた。

「何だったんだろうね…。

誘拐した犯人にも特に目的はなかったみたいだし、電話もただのイタズラだったのかな?」

エイジは樹里に言った。

「途中で罪悪感に気づいてやめたとか?」

「そう言うことなのかな…?」

樹里とエイジはお互いの顔を見あわせると首を傾げた。

「でも最終的には奈帆ちゃんが無事に帰ってきたからそれでいいと思う」

哲郎は彼らに向かって言った。

「そうですね、結局のところは何もなかったみたいですし」

「うん、店長が無事でよかった」

樹里とエイジは笑って首を縦に振ってうなずいた。