「それが『アロンジュ』に“丸山奈帆を誘拐した”って言う連絡があったらしくて」

青葉は言った。

「ゆ、誘拐!?」

そのワードに、哲郎は驚いて聞き返した。

「何かの間違いじゃないかと思って奈帆のスマホに連絡をしたけど、当人は出てこないし…職場の方にいるかと思って聞きに行ったら君から“昼過ぎに帰った”と言うことを聞かされたばかりで…」

青葉は頭が痛いと言うように、指でこめかみを押さえた。

「奈帆ちゃんが誘拐されたって、何で一体…?」

「どうしてなのかわからないんだ…」

「警察には連絡したんですか?

犯人から何か連絡とか…」

そう聞いてきた哲郎に青葉は首を横に振った。

「奈帆ちゃんが誘拐って…」

突然起こった思わぬその出来事に、哲郎は両手で頭を抱えたくなった。