皆さんの提案や気持ちはとても嬉しいけれど、正直私は智光さんに叱られるんじゃないかと思っていた。だって、仕事中に会議室まで取ってそんな話をしていたのだから。

それなのに智光さんは「議事録を読んだが……」となぜか楽しそうに話しかけてきて拍子抜けしたというかなんというか……。

「やえは本当にみんなに愛されているな」

「半分は智光さんだと思いますけど。だって快気祝いだって言ってましたよ」

「まあ、俺はついでだろう」

智光さんはおかしそうにくっくっと笑う。

「それよりごめんなさい。仕事中にそんな会議をして」

「別に仕事に支障が出たわけじゃないんだろう? いいじゃないか。で、やえはどっちにするんだ?」

「何がですか?」

「和装か洋装か」

あれれ?
意外にも智光さんも乗り気だ。

「……どっちにしましょう?」

「どちらでも似合うとは思うけど、それより俺がちゃんと結婚式を挙げてやれなくて悪かった」

「そんな、私は全然。なくても平気です」

「落ち着いたらいつかは、と思っていたんだがな。先を越されてしまった。まあ、言い訳にしか聞こえないかもしれないが」

私は首を横に振る。そんな風に考えてくれていたことがとても嬉しい。胸がじーんと熱くなる。だって智光さんと結婚できたことだけでも奇跡のようだもの。

「でも本当にいいのでしょうか。敦子さんたち、お金を出し合うって言ってて……」

「ああ、それなら大丈夫だ。ちゃんと議事録にも書いてあったよ。会費一人一万円、不足分は社長持ちって。しっかりしているな、うちの社員は」

しっかりというか、ちゃっかりなんじゃ……。
ああ、でもよかった。敦子さんたちに負担の大きいパーティーだったら気が引けるもの。

「そういうわけだから、二着でもいいが」

「えっ?」

「和装と洋装」

智光さんはニッコリと笑う。

私が何を着たいかよりも、智光さんの紋付き羽織袴姿やタキシード姿を見たい。ぜったいかっこいい。かっこよすぎて倒れちゃうかもしれない。

だって智光さんったら、本当にモデル並みにスタイルが良くて綺麗な顔なんだもの。和装も洋装も似合うに決まってるよね。

想像したら顔がへらっとニヤけてしまった。
そんな私を見て智光さんも満足そうに目を細めた。