あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い


 「えっとね。お酒飲みながら、お店に来るイケメンを観賞するの」
 
 「はあ?何それ。ひとりで行ってるんでしょ?」


 「うん。もちろん」
 
 「じゃあ、男の人に声かけられたりするんじゃないの?」


 「そういうことも、本当にたまにあるけど、私気の利いた返事とか出来ないから、そこまでで終わる」
 
 「……。で、イケメンは見つかったの?」


 「うん。最近一押しの人が現れたんだ」
 
 「えー、見てみたい。私も行ってもいい?」


 「だめ。そこは、ひとりで行くって決めてるの。ごめんね」
 
 「何それ。だって、声かけるわけじゃないんでしょ、その人に。なら、私が行ったっていいじゃない」


 「だーめ。由美に見られると減るから」
 
 「見るだけで減るイケメンってどんな安いイケメンなのよ 笑」

 
 そんな私がいまいち押しの彼が窓際ソファ席の彼なのだ。
 私にしては大変な進歩。

 だって……なんと最近は話しかけたいと思うようになってしまった。
 どうしたらいいだろうなんて考えたりしているし。

 水曜日なんて、昼過ぎるとそれで頭がいっぱいだったりして……。
 私どうかしちゃたのかな……。