あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い

 
 そして、今。

 隣に彼はいない。
 どこにいったんだろう。

 ばたん。音がする。
 足音がして、ドアが開いた。

 「玲奈、起きた?」
 
 「……うん。おはよう。今何時?」
 
 布団から少しだけ顔を出して返事する。
 びっくりした。私裸だったから。

 「もう十一時過ぎてる」
 
 「あ、あのね。トイレ行きたい」
 
 「うん、部屋出て右すぐの扉」
 
 「……服は」
 
 「あ、ごめん。これこれ」
 
 そう言うと、乾燥機までかけてくれていた昨日の服が綺麗にたたんで目の前に出された。
 恥ずかしい。下着まで。
 
 「何、恥ずかしがってるんだよ。ぜーんぶ見たから」
 
 「宗吾さんの馬鹿」
 
 顔ごと隠す。すると、ギシッと音がして、宗吾さんがベッドに乗り上げてくる。
 
 「何隠れてるのかな?」
 
 布団を引っ張られる。