あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い


 「え?どこに行くの?」
 
 「この間言ったこと覚えてる?玲奈のペースに合わせて進むから……」

 彼の顔を見つめる。
 影が落ちてきた。
 チュッと音を立てて唇が落ちてきた。
 
 「この続きだよ。覚えてる?約束しただろ。玲奈は俺が好きって言ったよね。少し進んでいい?いい子で『待て』をしていたんだ。『よし』の一言が欲しいな」

 「……恥ずかしい。自信ない」
 
 「は?」
 
 「……好き」
 
 「もう、俺をどうしたいんだよ。可愛すぎる。全部俺に預けるの、出来る?」
 
 こくりと頷く。
 
 「よく出来ました。玲奈が恥ずかしいなんて考えていられないように優しくする。嫌ならいつでも言っていいから」