あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い


 「玲奈、酔ってる?」
 
 下に降りて、歩き出したが少し足下がふらふらする。

 イタリアンでもワインを一本開けて、まさかその後バーに連れて行かれるとは思ってもいなかった。

 宗吾さんは私を膝から抱え上げ、お姫様抱っこをした。

 「やだ、やめて。大丈夫だから。支えてくれれば歩けるから」
 
 「玲奈。軽いな。キチンと食べないとだめだぞ」
 
 「食べてる。知ってるでしょ。私、結構食べるって」
 
 「そうだったっけ?いや、普段もっと重い樹木を担いだり、土を運んだりしているから、玲奈は軽い」
 
 ひょいひょいと揺らしながらわざと歩く。

 「やめて、余計酔いが回る」
 
 「……玲奈。さっきはごめん。窓際で肩を抱かれている玲奈を見たら、頭に血が上って見境つかなくなった。恥ずかしくて、もうあの店行かれないかもな」