あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い

 
 「早瀬さん、あいつ誰?」
 
 そう言うと、入り口に歩いて行く。

 私は、日高さんを追いかける。

 「君、こんな店で騒ぐと連れ出されるよ。それから、僕の連れに失礼なことをしないで下さい」
 
 日高さんは堂々と、城田さんに言い放つと私の肩を抱き寄せた。

 「お前こそ、玲奈になれなれしく触るな!」
 
 城田さんが日高さんをにらみつけて言い返す。

 「やめて下さい、宗吾さん。放して下さい、日高さん」
 
 私は、日高さんの手を肩から外すと、宗吾さんの横に行った。

 「日高さん、この人は私のお付き合いしている人です」
 
 「玲奈」
 
 「何もないわ、宗吾さん。日高さんは職場の直属の上司です。今日はお食事に誘われて、その後こちらに来たの」
 
 「下からお前が肩を抱かれているのが見えたんだ。それで、ここに上ってきてしまった」