あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い


 「なに?知り合い?」
 
 日高さんが私の顔を見る。

 「わかりましたから、城田さん、ここにいて下さい。今、玲奈さんを呼びますから」
 
 バーテン君が答えている。

 すると、窓際が見えるところまで宗吾さんが入ってきて、キョロキョロしている。

 土まみれのジーンズとTシャツだ。このバーには入れない。

 私を見つけると、大きな声で呼んだ。

 「玲奈!」
 
 店中の人が宗吾さんを見た。

 日高さんはびっくりして、私と宗吾さんを交互に見てる。

 私は金縛りに合ったように他のお客様の視線が怖くて、動けなくなってしまった。

 バーテン君が城田さんに落ち着いてと言って彼の身体を押さえている。