あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い


 「……今までそんな素振りなかったのに、変なの」
 
 「……玲奈さん。しっかりしてください。ここで何かあったら僕が城田さんに責められる。なんか言い訳にして帰った方がいい」
 
 「どうしよう」
 
 「玲奈さん。僕で良ければ城田さんに連絡しますから、迎えに来てもらいましょう。城田さんの電話番号教えて下さい」

 「何話してるんだ?」
 
 びっくりして振り向くと、日高さんが後ろに立っている。
 
 「いつになっても戻らないからどうしたかと思ったら、バーテンと親しげだね。どういうこと?」

 バーテン君は、顔色を変えず、日高さんに話しかけた。
 
 「いえ。先ほどの私が作ったカクテルについて感想を伺っていただけです。次に作るモノをどういうものにするかご相談していて」