あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い

 
 私の肩を揉んでいなくなる後輩ちゃん。
 私何ひとつ返事してないんですけど。

 どういうことなのよ。
 まあ、いいや。

 返事すると面倒なことになりそうだし。

 「早瀬さん、こっちの書類も頼むよ。今、そっちのパソコンに詳細流したから、見て作っておいてね」
 
 「わかりました」

 日高さんに返事すると、こちらに歩いてくる。
 横に立つと耳元でささやいた。
 
 「異性問題、克服できたんなら俺とそのうち飲みに行こうよ。一度も行ったことないしね、奢るよ」

 びっくりして、日高さんを凝視してしまう。

 そう、社内では結構イケメンで人気の人だった。
 誘い方もこなれてる感じなのね。

 後輩ちゃんは日高さんに興味はなさそう。
 年上らしいから。
 
 「いえ、そういうわけではないので」
 
 「そういうわけってどういうわけ?」
 
 「あ、あの」
 
 「ま、いいや。そのうちね、必ずだよ」