あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い

 
 玲奈って呼んだ?
 
 「どうした?」
 
 「嬉しい。玲奈って呼んでくれた」
 
 「あ、ごめん。もう、無意識で頭の中で勝手に呼んでたから、つい口から出ちゃったよ」
 
 「私も、呼んでいい?宗吾さん」

 すると、無言でまた自分の頭を私の肩に置いて固まっている。

 「あー、俺をどうしたいんだよ!もう、可愛すぎる」
 
 そう言うと、私の身体をなで回す。そして、そっと頭の上にキスを落とした。

 「今日はこれで終わり。少しずつ慣れていこう」
 
 「うん。ありがと」
 
 にっこり笑い、頭を上げて彼の顔を見つめる。

 彼は、真顔で私を見ると、ごめんとつぶやいて私のおでこにキスを落とした。

 「……我慢できなかった。はー、これは俺の戦いだな」
 
 「うん。大丈夫。嬉しい」
 
 「もう、黙れ。これ以上はやめてくれ。どうしたいんだよ」

 真っ赤な顔をした彼は、私を放した。深呼吸してる。
 
 しばらくしてまた手を繋ぎ、園内に戻った。

 夕方、バラ園を出て、マンションまで送ってくれた。
 
 マンション近くで帰り際、おでこにキスを落として帰って行った。
 
 私にとっては今日は大きな一歩を踏み出した一日だった。
 

 彼が好き。多分。間違いなく。

 私、恋を再開できそうです。