「だ、だいじょうぶ。私、こういうの慣れてなくて」
「え?」
「前に話したでしょ。祖母のところで引きこもっていたって。実は高校生の時ストーカー被害にあってから、男性恐怖症で学校に一時期通えなくなってしまって。大学二年生頃からようやく男性とはなしが出来るくらいまで回復したけど、お付き合いなんてできなくて。会社でもそういう事情を知られているので、皆腫れ物を触るようにして距離をおかれてたの」
彼は驚いた顔をして私を見つめている。
「だから、びっくりしただけなの。ごめんなさい。城田さんのことはそういうのを克服したことさえ忘れるくらい自然に一緒にいられるから考えていなかった」
「ごめん」
彼は、そう言うと私の身体から手を放して一歩下がった。
「やめて、そうじゃないの」
私はそう言うと、彼にしがみついた。
まるで、大木に止まる鳥みたい。
「嫌じゃないの。嬉しかった。ただ、反射的に身体がびっくりしただけだと思う。次からは大丈夫だから、離れないで」



