あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い

 
 「遅くなったね。送るよ」
 
 そう言うと、また手を握られて車へ向かった。


 「今度、緑と花のフェスタというイベントに出るんだ。良かったら見においでよ」
 
 「本当ですか?是非行きたいです」


 「再来週の金土日にバーの近くの大きな都立公園であるんだ。近くなると僕も忙しくなるから、それまでにデートしよう」
 
 「嬉しいです」


 「どこに行きたい?」
 
 「お仕事以外で植物見るのは飽きてしまってます?」


 「まさか。勉強にもなるから嫌じゃないよ」
 
 「それなら、バラ園に行きたいです。まだ間に合いますよね?」


 「そうだね。もう終わりの頃だけど、まだ見られる品種もあるだろう。近くのところに行ってみようか?」
 
 「はい」