「始まっちゃったね」



私がそう言っても、緑くんは何も言わない。
花火を見るわけでもなくただただひたすら歩いていた。





私たちの特等席に着いた時には、花火はもうクライマックスで1番豪華に花火が上がっている時だった。



「ねえ、橙」


「ん?」



名前を呼ばれたけど、緑くんの顔をみる気にはなれなかった。



「俺、本当に橙のこと幼なじみだなんて思ってないって言ったらどうする?」


「……今すぐ、帰る」



目には涙がたっぷり溜まっていて、いつ垂れてもおかしくない。



「でも、女の子として橙のこと大好きって言ったら帰んないでくれる?」


「へ?」



びっくりしすぎて垂れそうだった涙も収まってしまった。



「俺、小さい頃からずっと橙乃の事、女の子として好きだよ」



タイミングよく、今年の花火大会最後の大きく綺麗な花火が上がり、散った。