「美紅」

後ろを振り返ると、幼馴染の飛竜 和輝(ひりゅう かずき)|が私を見下ろしていた。

サラッとした黒髪にキリッとした男らしい顔立ち。180cmの身長は普通の女子より身長の高い私でも20cmの差がある。そしてグレーの瞳という特徴的な見た目をしている。

まじまじと私を見る和輝に首を傾げると和輝は口を開いた。

「お前いつになったらそいつを離すの?」

そう言われてはっとなると私はさっき背負い投げした男子生徒を押さえつけるのをやめたが、もう手遅れだった。

彼は私の押さえつける力が強すぎたせいか気絶していた。

「あ…、やってしまった…。」

「お前これで何回目だよ」

クスッと笑う和輝。

私だって本当はこんな面倒なことしたくない。

毎日知らない男子生徒に絡まれてるなんてほんとにごめんだから。

私が歩き出すと和輝も着いて来た。

同じクラスだから着いて来てもおかしくないんだけど。

「早く彼氏作ればいいのに。そしたらお前のこと狙っている男子生徒は身を引くだろう?」

靴を履き替えてると和輝はそう言ってきた。

「いつも言ってるでしょ?私はベストカップル賞も恋愛も興味ないの。」

「そうかもしれないけど、お前このままじゃ知らない男と付き合うことになるかもしれないんだぞ?」

「私に勝てる人が出てきたらの話でしょ?」

「まあそうそういないかもしれねぇけど…」

少し悲しそうな顔をした和輝はご飯が食べられない野良猫のような顔をしていた。

いつもクールな感じの和輝だけど落ち込んだりするといつも猫みたいに見える。

なんで悲しそうな顔してるんだろう…?

心配…してくれてるのかな?

階段を和輝より少し先に上がって階段で立ち止まってるの前に立った。

「大丈夫!私は強いから!そこら辺の任侠生徒に負けないのは和輝も知ってるでしょ?」

和輝の頭をクシャクシャと撫でると和輝がパッと顔を上げた。

「おい!子供扱いするんじゃねぇ。」

ちょっと不機嫌になったもののいつも通りの和輝に戻ったみたいで安心した。

「私達はまだまだ子供だからいいんです〜」

階段を駆け上がりながら和輝に言うと和輝は私を追いかけてきた。

少し彼の顔が赤かったように見えたが、たぶん気のせいだろう。