会場には思ったよりも多くの人がいらっしゃって、私はびっくりして緊張で身体が動かなくなりました。
 でもお兄さまが「心配ないよ、今日は私が隣にずっといるから」と言ってくださり、私は大きく息を吸ってはきます。
 呼吸が整った頃、お兄さまと一緒に皆さんのほうへと歩いていきました。

 そんな私たちに気づいたようで皆さんの視線が一気に集まります。
 どうしましょう、皆さんに見られています。
 また鼓動がドクドクとしてきて怖くなってきたときに、お兄さまがそっと優しく囁きました。

「大丈夫、私を信じて」

 震える私の手をしっかり握ってくださり、皆さんに向かうように立ちます。
 すると、お父さまが会場にいる皆さんに声をかけて私を紹介しました。

「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。早速ではありますが、今日は皆様にご報告と紹介がございます。ここにいるローゼマリーを正式に我がヴィルフェルト公爵家の娘として迎え入れます。皆様、どうぞこれよりよろしくお願いいたします」

 お父さまの紹介に合わせて私はドレスの裾を持ってちょんとお辞儀をします。
 それに合わせて会場からは拍手が沸き上がりました。