「おそらく火事の影響でしょうね」

 お医者さんのような方は、私の身体を診察しながらそうおっしゃいました。
 私はどうやら修道院でおこった火事で煙を多く吸ってしまい、声が出なくなってしまったようです。
 確かに身体の痛みよりも喉の痛みや呼吸の苦しさが、私の身体を蝕んでいるように思いました。

 診察が終わったあと、公爵さまはお仕事があるからと部屋をあとにされました。
 部屋の中に残ったラルスさまは、ベッドの横にあった椅子に腰かけると、優しい面持ちで私に声をかけます。

「怖かっただろう、もう安心だからね」

 私が安心するようにか、私に目線を合わせて話してくださいます。
 すると、ラルス様は机の引き出しからレターセットとペンを用意して、私に差し出しました。