「君がいた修道院は火事でなくなったんだ。シスターは行方不明で修道院の立て直し時期も決まっていない。だから、勝手なことをして申し訳ないが身寄りのない君を引き取らせてもらった」

 その言葉があまり理解できなくて少し私は首をかしげてしまう。
 そうすると、今度はラルスさまが話を始める。

「君は私の義理の妹になったし、いつでも頼ってほしい。でもまずはゆっくり休むことが先だね」

 そういってめくれていたシーツをまた私にかけなおしてくださる。
 つまり、私はこのお家の子になったということでしょうか?

 こんな素敵なお家の子に?

「遠慮はしないでくれ。そうだ、君はなんて名前なんだい?」

 そう言われて私は「ローゼマリー」と答えました。

 なのにお二人はきょとんとして私のほうをじっとみています。

「まさか」
「もしかして」

 公爵さまとラルス様は顔を見合わせて難しい顔をしています。

 お二人に私の名前は届きませんでした。


 私は声を失ってしまっていたのです──