通せんぼうをしゃがんで潜るか、飛び越えるのか。四鬼さんはどちらの手段も選ばなかった。
おもむろに花束を涼くんの鼻先へ掲げ、叩こうとする。涼くんがそれを瞬時に避ける隙きをつき一歩踏み込んだ。
「お邪魔します」
あの一瞬で靴を揃える余裕まであったらしい。四鬼さんは実にスマートな入室をしてみせる。
「桜子ちゃん、あぁ今日もきれいだね。調子はどう? 吐き気はない?」
「え、え、あ、はい」
「それはなにより。桜子ちゃんの好きな花をまだ聞いてなかったから、僕の好きな花を捧げるよ。真紅の薔薇の花言葉はーーあなたを愛します」
片膝をついて王子様がお姫様にするポーズで言う。四鬼さんの一連の動きは滑らかで指摘するターンを与えない。わたしは自然と花束を受け取っていた。
「花を貰ってくれてありがとう。可憐な薔薇は君みたいな女性の側にあるべきだ。もし断られれば、むさ苦しい男の元で咲かなくてはならない。そうならなくて良かった」
むさ苦しいなどとんでもない。なんなら薔薇は四鬼さんが似合う。
今日は白い制服じゃなくシャツにパンツというシンプルな装いだが、振る舞いで品の良さを際立たせる。
おもむろに花束を涼くんの鼻先へ掲げ、叩こうとする。涼くんがそれを瞬時に避ける隙きをつき一歩踏み込んだ。
「お邪魔します」
あの一瞬で靴を揃える余裕まであったらしい。四鬼さんは実にスマートな入室をしてみせる。
「桜子ちゃん、あぁ今日もきれいだね。調子はどう? 吐き気はない?」
「え、え、あ、はい」
「それはなにより。桜子ちゃんの好きな花をまだ聞いてなかったから、僕の好きな花を捧げるよ。真紅の薔薇の花言葉はーーあなたを愛します」
片膝をついて王子様がお姫様にするポーズで言う。四鬼さんの一連の動きは滑らかで指摘するターンを与えない。わたしは自然と花束を受け取っていた。
「花を貰ってくれてありがとう。可憐な薔薇は君みたいな女性の側にあるべきだ。もし断られれば、むさ苦しい男の元で咲かなくてはならない。そうならなくて良かった」
むさ苦しいなどとんでもない。なんなら薔薇は四鬼さんが似合う。
今日は白い制服じゃなくシャツにパンツというシンプルな装いだが、振る舞いで品の良さを際立たせる。

