約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

「四鬼千秋が何の用?」

「君はーー夏目涼君だったね? 聞こえなかった? 桜子ちゃんのお見舞いに来たんだ」

 わたしが玄関に行くと2人は険悪なムードで話を始めていて、間へ入ろうとしたら涼くんが足を廊下に付け進路を妨害する。

「俺はこいつの両親から留守を任せられている。不審者は中に入れられない」

「僕が不審者? 面白い冗談だね。夏目君の耳にも入っているだろうけれど、葉月高校に通うことにしたんだ。不審者じゃなく君の先輩だよ」

 四鬼さんはわたしに気付くも、涼くんとの会話を続けた。

「先輩にはそれなりの言葉遣いをしなくてはね? サッカー部は上下関係を指導しないの? 円滑な人間関係を築く為にも先輩後輩の立場をわきまえた方がいい。スポーツは規律を求める部分も多いだろう?」

 赤い薔薇の花束を抱え、棘のある言い回しをする。

「アンタにわきまえないだけ。他はきっちりやってる」

 まぁ確かにわたしの両親に対してはしっかりしているか。敵か味方か、興味があるかないかで線引きをきっちりする涼くん。

「ふーん、僕が特別って事ね」

 涼くんの態度の悪さを四鬼さんはそう捉え、ポジティブ過ぎやしないだろうか。

「は?」

「僕、特別扱いは好き。特別って良い響きだと思う。それはそうと彼女に花を渡したい、邪魔だから退いてくれないかな」