「これでよし!」

 問題集の空欄を埋め終え、わたしはガッツポーズ。退院後続く自宅療養も1週間目、そろそろ復帰の目処が立つ。

【ピンポーン】ちょうど良いタイミングで涼くんの来訪が知らされる。壊れたインターホンもしっかり直された。

 リズムカルに1階へ降りる途中、今朝お母さんが言っていた事を思い出す。

「家庭教師のお礼にケーキよね」

 とりあえず勉強を見てもらうのは今日まで。涼くんは授業内容を欠かさず教えてくれた。
 ケーキがその対価にしては少しチープな気もするが、わたし達で作ったモンブランを用意する。

「いらっしゃい!」

「……あ、あぁ」

 涼くんは玄関から入ってくるのに慣れない様子で、迎えの挨拶へ目を合わせない。

 お父さんが単身赴任先に戻り、お母さんはパートの時間を伸ばしたので家の中は静かだ。通り魔事件関連のニュースが報道されるテレビはつけられない。

「聞いてるかもしれないけど、来週あたりから学校にへ行けそうなの」

「良かったな」

「うん、涼くんがこうしてノートを見せてくれるから授業に遅れないで済みそう。ありがとう」

「別に」