「俺の血は必要ない? あぁ、四鬼千秋に血を強請ったのか? 四鬼千秋の血を飲んで間に合ってる?」

「ねだってない! わたしは涼くんの血しか欲しくない、飲みたくないよ!」

「ならキスなんかさせるんじゃねぇ! 他の男に気安く触らせるな!」

 涼くんの腕を退かそうともがく程、吸血しろとばかりに押し付けられる。話している最中にこれを繰り返すと歯をかすめ、出血させてしまった。

 垂れる血を物欲しそうに見てはいけない、わたしは目をぎゅっと瞑る。視界が閉ざされれば血の香りがより鮮明となり、逆効果なのは分かっていた。
 それでも涼くんに血だけ欲しいと思われたくない。

「おい飲めよ。お前が飲まないと血が止まんないだろ、ほら」

「……」

「お前が四鬼千秋の血を飲んだと勘違いした。キスは、その、あれだ、四鬼千秋と間接キスなんて冗談じゃないというかーーいや、マジのキスしたのか?」

「血は飲んでない。キ、キスは慰めようとしてくれたんだよ。わたしが高橋さんの事件をニュースで見て、泣いていたから!」

 目を開けないまま言う。

「マジか、やっぱキスはしたのか」

「キスはともかく、涼くんも高橋さんの事を言わないよね? どうして? 涼くんはわたしに相談しても無駄だって思ったんじゃないの?」