こんな風に涼くんの言葉をばっさり切り捨てれば、どんな印象を与えるか分かっている。
 重度の貧血を患うわたしは団体行動を避け、運動部に所属するなど以ての外。マネージャーという裏方であろうと世話を焼かれる側になるのが関の山だ。

 積極的に動けば動いた分、涼くんの血を欲しくなる。涼くんだってそこは知っているくせに。

「ちっ、可愛くねぇ」

 短く吐き捨て、涼くんが雑に鞄を引っ提げ教室を出ていく。すれ違いざま肩をぶつけられ、よろける。

「ねぇ、あの2人、ちょっと怪しくない?」

 この声は高橋さん、か。

「中学校の時、付き合ってたらしいよ! キスしてるの見た子がいるの!」

「えぇー! 夏目君が? ショックなんですけど」

「しかもしかも、浅見さんからキスしてたみたいだよ」

「クールビューティーに見えて、そういう所は大胆なんだ。浅見さんって年上の彼氏居そうじゃない?」

「分かる! うちらみたいなお子様とは仲良くしませんオーラ、出てるもん」

 残されたわたしは、またもや噂に晒された。
 誰に誓えばいいかは置いておいて、誓って、涼くんとわたしは付き合ってなどいないし、キスは血を吸っていたのを見間違われたんだ。

(あれから外では血を吸わないようにしてるし)

 纏わりついてくる誤解と先入観を払い、わたしも退出した。