急に手を強く引っ張られバランスを崩す。姿勢を取り直す間なく、近くのベッドへ倒れ込んだ。
 ぎしりと軋む音が追いかけてきて、涼くんは片膝を乗り上げる。

「母さんが電話で話してるの聞いたんだ。四鬼千秋と病室で抱き合ってキスしてたって? そんな事してれば勘違いするよな? まぁ勘違いじゃねぇかもしれないが」

「ちが、っ!」

 起きて弁解しようとしても、させてくれない。涼くんはわたしの両肩をシーツへ固定する。

「四鬼千秋とキスしたのか?」

「……こ、怖いよ涼くん」

「俺はキスしたのかって聞いてんの! 答えろよ」

 怒鳴られ、びくつく。おろおろ視線を泳がすだけで返事ができないでいると、顎をぐいっと掴まれた。

「血、やろうか?」

 見せつけるみたいにスウェットを捲り、腕を唇の前へ差し出す。今は特に乾いていないが、くれると言われれば飲みたくなる。涼くんの血ならいつでも飲みたい。

 ごくんーー条件反射で喉を鳴らすわたしに涼くんは傷付いた顔をした。あぁ、やっぱり飲ませたくないのかな。

「……要らない」

 可能な限り、負担をかけたくないので断った。しかし、それはそれで涼くんが複雑な顔をする。