約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

「ちょっと寒いね、もう寝よう。涼くんは明日早いでしょ?」

 春の夜風は冷たい。わたしはカーディガンを擦る真似をして窓を閉めようとした。

「なぁ」

「ん?」

 わたしは目を合わせない。高橋さんの事を涼くんの口から聞きたかったな、唇を噛む。

「そっち行っていいか?」

「えっ?」

 いいも悪いもなく既にこちらへ飛び移ろうとしており、反射的に彼を招く動作をしてしまう。
 わたしでも超えられる距離なので涼くんが手こずるはずなく、軽やかに部屋へ入ってきた。

「い、いらっしゃい、なのかな?」

「……」

 涼くんは疑問形の挨拶を無視し室内を一周見回す。少し気まずそう、いや悔しそうに唇を噛む。
 別に見られて困るものはないが、せっかくなのでお茶を用意した方がいいんだろうか。

「涼くんがわたしの部屋に来るなんて久し振りだね。まだお母さん起きてるからお茶を持ってきて貰うね?」

 いそいそと涼くんのクッションを準備した。

「待てやめろ、俺を殺したいのか?」

「はい? 今は血を飲む時じゃないし、部屋に入ってこられてもいいじゃない。まぁ遅い時間だから注意されるかも。あー、玄関使わなかった事も怒られるか」

「……そんなんだからじゃねぇの?」

 ふ、と涼くんの雰囲気が変わった、明確に呆れから怒りへ変わった。クッションを踏まれ、プリントされたキャラクターの表情が歪む。

「涼くん?」

「お前がそんなんだから、四鬼千秋にキスされるんじゃねぇのか?」