約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

「四鬼会長は要求が通らなかったからと言って、お父さんに不利益な真はしない。そんな器の小さい人間じゃないさ。あれは逆に欲しい物が手に入らないと逆に燃えるタイプだろう」

 車は赤信号を前に緩やかに減速。買い物袋を下げた女の人、音楽を聞く若い男の人、学生カップルが戯れ合いつつ横断歩道を渡っていく。

「入院中に投与されていた薬が有効みたいでな。はっきり言ってとても高価な薬なんだが、お父さん達が一生懸命働いてそれを引き続き桜子に使わせたい」

「お母さんも店長に相談してパートの時間を伸ばして貰おうと思うの」 

 お母さんに手を握られる。2人のわたしへの愛情が温かくて涙ぐむ。
 しかし、涼くんは別。こんな深い家庭事情を聞かされても困らせてしまう。

「いいっすよ、俺は別に」

 が、あっさり返事をする。

「はぁ?」

「はぁって何だよ? お前が良くなるなら協力するって言ってんの。俺がお守りを引き受ければ、おじさん達はしっかり稼げるんだろ? それでいいじゃん」

「いやいや良くない。これはわたしの家の問題で涼くんを巻き込むのは悪いよ」