四鬼さんとわたしが付き合ってる前提で話はどんどん進んでいく。

「あ、あの! ちょっと待って! わたしと四鬼さんはーー」

「桜子は黙っていなさい!」

 話題の進路変更をしようとしたら、ここでお父さんが口を開いた。

「会長直々に昇進の話があったが丁重にお断りした。こういうやり口はポリシーに反するんでね。千秋君、本当に桜子と結婚したいなら自分の力で桜子を掴むんだ」

 いいね? 力強く念を押す。

「……お義父さん」

「桜子は夫婦の宝物なんだよ。幾ら金を積まれてもあげられない。こうして立派な病室へ入れてくれたのには感謝している、ありがとう。しかし、桜子との付き合いや結婚は認められない」

 お父さんは四鬼さんに頭を下げて、お母さんも倣う。これほど神妙な空気の中、実は四鬼さんと付き合っていないとは言い出せない。
 最初に四鬼さんを彼氏と嘘をついたのはわたしだ。まさか互いの両親まで巻き込み、拗れていくとは考えが及ばなかった。

(四鬼さん、ごめんなさい)

 そう合図を送ろうとし、ふと彼が楽し気な表情を浮かべているのに気付く。

「お義父さん、お義母さんの気持ちはよく分かりました。
ですが僕も引けません。僕には桜子さんしかいませんし、桜子さんにも僕しかいないはず。絶対結婚を認めて貰いますので、覚悟を宜しくお願います!」

 わたしの肩を抱き、堂々と宣言する。