約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 四鬼さんは両親をスマートにソファーへ誘導、わたしを隣に着席させた。

「将来を見据えるも何も、娘は高校生ですよ? 四鬼さんも学生でしょうに?」

「千秋と呼んでください」

 お父さんが項垂れる一方、お母さんは話し合いに応じる構えだ。

「じゃあ、千秋君」

「はい、では僕もお義母さんとお呼びしますね」

「医療提供の申し出はとても有り難いわ。正直な話、私達にはこんな大病院で治療を受けさせるお金がないの」

「そこはご心配なく。医療費でしたら四鬼家が負担します。父も話したでしょうが、桜子さんには最高の医師をつけ治療にあたって頂きます」

「違うわ、私が言いたいのは医療提供の見返りとして娘は差し出せないーーそういう事よ」

 お義母さんと呼ばれ多少動揺するも、きっちりノーを伝える。

「桜子は普通の女の子なの。四鬼グループの後継者である千秋君と価値観が合うはずない。今は好きだという気持ちのみでやっていけるかもしれないけれど、それだけじゃ駄目になる時が必ず来るわ」

「桜子さんとのお付き合いは認められないと? 価値観相違の懸念はお義父さんの出世で解決されませんか? グループの中枢で力を発揮するうち、四鬼を理解して下さると僕は信じています」