約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

「桜子ちゃんは不思議だな。桜子ちゃんが泣いたり困ったりしてたら、僕は何としてでも助けたくなる」

 抱擁が強くなるが苦しくない。もっときつく寄せてくれたら吐き気は和らぎ、不安も無くなりそうで。
 ねだる風に頬を擦り寄せたところ、優しく髪を梳いてくれた。あぁ、これも気持ちがいい。

「君とは出逢ったばかりなのに……やっぱりそうなんだね。他とは全然違う」

「他?」

 顔を上げ、四鬼さんを覗く。こんなに心地よいのに離れていってしまうのだろうか、だとしたら嫌だ。側に居て欲しい。
 四鬼さんの袖を掴む。

「睨まないでよ! 桜子ちゃんが見付かったらもうしないから。こういう事やそれ以上も桜子ちゃんとだけしていきたい」

 こういう事やそれ以上とは何か聞き返す前に、四鬼さんが頬へキスしてくる。わたしが呆気にとられていると反対側の頬へキス、おでこにキスを続けた。

「好きだよ桜子ちゃん。僕の約束された花嫁」

 抱きしめ直して旋毛へもキス。

「さささささ桜子ー! これは一体どういうつもりなんだー!」

 ちゅっ、この小気味良いリップ音は新たな混乱を招く。お父さんが殺気立ち飛び込んできたのだ。