「お待ちしておりました、当主様」

 てっきりお父さん達が来たと思ったが、スーツ姿の男性が入ってくる。

「千秋は?」

「生徒会活動があり、まだ学園にいらっしゃいます。終わり次第こちらへ」

「はぁ、姫の目覚めに駆け付けないとは不甲斐ない息子だ。あぁ、姫様、気分はいかがかな? 急な事だったので、こんな部屋しか用意出来なくてすまないね?」

 男性はわたしを見るなり、にっこり微笑む。
 柊先生への態度が高圧的なのに対して、わたしには随分と声音は柔らかい。

「あ、あの」

「私は四鬼千紘。君のお父さんが勤める会社の会長だよ」

 と言われても親近感はわかず、むしろ凄く偉い人だと分かって距離感が生まれる。

「あっ、いつも父がお世話になっています! 素敵な病室をありがとうございました」

「お父さんはとても優秀な社員と評判だよ。娘さんの教育も行き届いている。なぁ、柊?」

 四鬼会長はニコニコしつつ、わたしを見定めているみたい。
 柊先生はドア付近へ移動し、無言で頷く。まるで会長の視界から外れるように。

「会長は四鬼千秋さんのお父さんですか?」

「ほぅ、千秋を知っているのかい? そうだよ、私は千秋の父親だ」

「千秋さんは貧血で倒れていたところを助けてくれました。あと学校で困っていた時も」

「愚息が姫のお役に立てたなら良かった。あれは後継者として自覚が足らぬからな」

 会長はベッドへ腰掛け、じっと見詰めてきた。