「っ、きゃあ!」

 自分の悲鳴ともに飛び起きた。知らないうちに眠ってしまったらしく、寝汗がひどい。額を拭い時間を確かめれば深夜を回っている。
 妙にリアルな夢を見てしまったな。鏡で目の色を確認してみても赤くはなく、息をつく。

 柊先生や四季さんの目も赤く見えた事からして、思うより鬼の件が後を引いているみたいだ。

「シャワー浴びよう」

 頬をぺちぺち叩き、悪夢の余韻を潰す。お父さん達は寝ただろうし、さっと汗を流してわたしも寝よう。物音が立たないよう1階へ向かった。

「こんな大病院が桜子を診てくれるの?」

 リビングはまだ明るく、話し声が漏れている。

「あぁ、こんな事がなければ病院長に診てもらうなんて無かっただろうな。しかもグループ関係者でも予約が取りにくいって話だぞ」

「怪我の功名じゃないけれど、これで桜子の身体が良くなるといいわ。私が丈夫に産んであげられなくて、あの子まともに学校生活を送れないのよ」

「母さんのせいじゃない、泣くな」

「私のせいよ! 友達とお喋りしたり、行事や部活動に参加したり、あの子に当たり前の事をさせてあげられないのよ? うっ、桜子に申し訳なくて」

「桜子もそんな風に思っていないよ」

 お母さんがテーブルへ突っ伏すシルエットが廊下へ伸びてきた。

「柊先生の申し出を有り難く受け、土曜日は皆で病院へ言ってみよう。医院長ならきっと桜子を助けてくれる。な?」