朝のHRが始まる直前に教室に入る。それでもクラスメートの視線を一斉に浴び、気まずい。ぺこりと会釈して窓際の席へ向かう。視界の隅で涼くんが女子に囲まれているのが見えた。

「浅見桜子さん、でいいよね?」

 席につくなり声を掛けられる。

「え、あ、はい、そうです」

「あはは、同級生なんだから敬語はやめて! あたしは学級委員の高橋由香里。よろしく」

「よ、よろしく」

「浅見さん、休んでたじゃない? 先生から浅見色々教えてあげてって言われてるの。放課後になるけど、学校を案内してあげる」

 高橋さんは活発そうで、はきはき喋る。クラスの代表に選ばれたのも納得だ。

「そんな、悪いから大丈夫だよ。一人で見て回れるから」

 今朝の件もあって、なるべく自分でやりたい。それに先生に言われたから手伝う行動が素直に喜べない。

「もし分からない事があったら、高橋さんに聞いていいかな?」

 高橋さんの気分を害さないよう、言葉を続ける。

「ごめんね? まずは自分で確認してみたくて」

「うん、いいよ! 浅見さんって聞いていた通り、みんなと仲良くしたがらないんだね」

 高橋さんは明るく了承し、さっさとわたしの前から去っていく。きっと悪気はないのだろう。彼女が戻った先には同じ中学出身の子達がいて、遠巻きにわたしを観察する。

 みんなと仲良くなりたくないとは思っていないが、誰に言い訳すればいいのか。