食事会を終え、わたしはベッドでお腹をさすっている。楽しくて食べすぎてしまった。

「ふぅ、今日一日で色々な事があったな」

 これからわたしを取り巻く環境は目まぐるしく変化するんだろう。予感というよりは確信に近い勘に目を閉じる。

 あれだけ食べたのに身体は満たしきれない。血でなければ潤せない箇所がヒリヒリした痛みを伴う。

 ーー血が飲みたい。一瞬でも過ぎらせてしまえば意識が支配されていく。
 とある日の吸血シーンが頭の中で再現された。

 涼くんの血は蕩けるように甘い。筋肉質な肌へ歯を立てると緊張からかもっと硬くなるので、舌を使って痛くしない大丈夫って伝えるんだ。

 涼くんの潤んだ瞳を見上げ、丁寧に噛み付く。どういう仕組みか分からないけれど深く突き立てなくとも出血してくる。
 本当は歯を奥まで押し込みたいものの、それをしたら嫌われてしまうからしない。

 涼くんの血は1滴たりとも無駄にできない。大事に、大事に味わう。

 吸血中、涼くんが苦しげに呻く事があり、仰け反って痛みを堪える。血管が浮かび上がる首筋はどうしたって魅力的に映って、許されるなら噛み付きたい。でも噛み付けない。

 血が飲みたい、血を飲む想像をする、血が飲めない、悪循環を起こして目の奥が熱くなる。
 ふいに脇にある姿見が気になり、視線をやった。
 わたしの目が真っ赤に染まっている。