約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

「桜子ちゃん、大変だったね?」

 涼くんのおばさんが声を掛けてくれた。
 涼くんのおばさんはお母さんとは違うタイプでバリバリ仕事をこなす、いわゆるキャリアウーマン。今時の女性像という感じがしてかっこいい。

「うちので良ければこき使ってね」

「駄目だよ、涼くんサッカーで忙しいし」

「本人もあれで送り迎えを楽しんでるの」

「そうは見えない。面倒そうだよ」

「ふぅ、涼の仏頂面は父親譲りでね。私に似たら王子様タイプだったのに」

「お、王子様! ぷっ」

 涼くんが四鬼さんみたく振る舞うのを想像し、つい吹き出してしまう。

「その点、桜子ちゃんは紛うことなきお姫様よね。色んなお洋服を着せたくなっちゃう。高校生になったし、アクセサリーも付けていいかも!」

 おばさんはわたしを自分の娘みたいに扱ってくれ、洋服や雑貨などを一緒に買い物する事もある。
 涼くんのポーカーフェイスがおじさん似でも、そうしてクシャッと笑う仕草を昔の涼くんもしていたなぁ。

「ところで、2人はなんでエプロンしてるの?」

「あぁ! 桜子ちゃんを元気付ける会を開こうって話になったのよ! ねぇ?」

 おばさんがお母さんへ話を振る。

「そうそう、久しぶりにお父さんも帰ってくるのもあってね。桜子の好きなメニューを腕によりをかけて作ったわよ!」

「それってお父さんに手料理振る舞いたかったんじゃなくて? お父さんが手料理を恋しがってるの、知ってる。素直じゃないよ?」

 言うと、顔を見合わせるお母さん達。

「食事会をやろうと言い出したのはうちの息子なんだ」

「え?」

「まったく素直じゃないのはどっちよ! 涼君、桜子を凄く心配してくれてるの」

 涼くんと目が合う。こちらの話題を気取るなり、すぐ反らされてしまったが。

 素直に、か。
 わたしは胸に手を当てた。

 涼くんの血が飲みたい。