「桜子ー!」

 家の前で待ち構えていたのはお父さん。わたしの姿が見えるなり、勢いよく抱き付いてくる。

「大丈夫か? どこも痛くないか? 辛くないか?」

「へ、平気だよ。こんな道の真ん中でやめて恥ずかしいよ」

「恥ずかしい事があるもんか! 大事な大事なひとり娘が危ない目に遭ったんだぞ? お父さんが側に居てやらなくてすまなかったな」

 ぎゅうぎゅう、音までさせる抱擁は暑苦しいものの、本当は言うほど恥ずかしくはなくて。むしろ安心する。

「……じゃあ、俺はこれで」

 涼くんは相変わらずの過保護ぶりに引きながらも、お父さんから携帯電話に帰宅の催促が入った際は説明してくれた。

「涼君! 桜子を助けてくれてありがとう。おじさん、桜子に何かあったりしたら生きていけないよ。聞いたぞ、学校の送り迎えをしてくれてるんだ? 本当にありがとう!」

 わたしから涼くんへ乗り移り、背中を叩く。

「お、おじさん、ちょっと」

「あぁ、涼君が居なかったらどうなっていたか。ありがとう、ありがとう、ありがとう」

 抱き締められ居心地が悪い涼くんだが、お父さんを剥がしたりせず耐えている。直立不動で。