「ごめんね、涼くん」

「……しょうがねぇだろ。なんで血を飲まなきゃいけねぇかは知らないが、お前が血を飲まないと生きていけないのは分かってる」

「ごめんなさい」

 謝るしか出来ない。

「別に? 俺が血をやらなくて死なれると後味悪いだけ」

「う、うん」

 成長に伴い、欲する血液量も増えてきた。涼くんの負担は多くなるばかり。血を分け与えた後はあぁして目眩に襲われる。
 涼くんは首を振り、あらかじめ用意してあったスポーツドリンクを一気飲みした。

「涼くん以外に血をくれる人がいるといいのに」

「はぁ? なんて?」

 口を拭い、低い声で聞き返される。

「いやだって、いつも迷惑かけちゃってる。涼くんもそろそろ彼女とか欲しいんじゃないかなとか」

「彼女? なんでそんな話になる訳?」

 それはこのところ、涼くんがわたしを避けるからだ。涼くんはモテるが、わたしの歯型を付いたままじゃ恋愛は難しいだろう。

「そもそも血を吸わせてくれる相手をどうやって探す? 出来もしない事を言うなよ」

 わたしが迷惑だとも、彼女が欲しい旨も否定しない。

「家族が起きてくる時間だな。満足したならさっさと帰れ」

「あ、ねぇ良かったら一緒に登校しない? 一人じゃ心細くて」

 追い出される気配に提案してみる。すると頭に乾いた音が落ちてきた。

「一緒に? お手て繋いで? ピカピカの一年生は手を引かれないと学校に行けないか?」

 ノートを丸めて握る涼くんが呆れている。