(勝手にすればいいじゃない!)

 もはや宣戦布告にあたる主張に、その言葉を飲み込むのが精一杯だった。
 冷静を装い高橋さんを剥がすと廊下へ。振り向かず、ずんずん歩く。角を曲がり教室から離れた辺りで大きく息を吐いた。

 正直、高橋さんがーー羨ましい。迷わず涼くんを好きと言えて羨ましくなる。だって、わたしの好きは血が混じって純粋な気持ちじゃないから。

 涼くんは血をくれるから好き、血をくれないと生きていけないから好きという風にわたしの好きには目的も含まれる。もちろん、それだけじゃないけれど、高橋さんみたく想えている自信がない。

 涼くん以外から血を貰えれば引け目を感じないで済むのかな、ううん、涼くん以外の血は毒だ。他を試さなくとも分かる、涼くんの血は甘くて美味しい、全身が満たされ潤う。

 ーーごくん、喉が鳴った。いつの間にか思考に涼くんの血の香りが巡る。

「血、飲みたいなぁ」

 自然と天井へ向けて欲求を呟く。

「血を飲みたい?」

 側で靴音がした。わたしの発言を繰り返す人物は白衣を纏い、視線がぶつかると携えたファイルを落とす。