約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 身体が弱いわたしへの配慮は他の生徒会からすれば特別扱いとして映るし、火種となるので遠慮したい。
 しかし、これは受け持つ生徒へ寄り添った行動だーー先生の目がそう語っている。
 わたしの為にカウンセリングの予約をしたと伝えたくて、ここで待っていたのかもしれない。

「ありがとうございます」

 辞退しきれず、わたしは曖昧な笑顔を作る。
 一方、先生は照れて襟足を掻き、頷いた。




「練習終わったら鳴らす。鳴ったら校門で待ってろ」

 ーー放課後、涼くんは自分の携帯電話を渡してくる。言い付けを守る律儀さと、わたしが先に帰ったりしないよう携帯を預ける計算高さが伺えた。
 こちらの返事を待たず、涼くんはグラウンドへ行ってしまう。

 涼くんの携帯はクラブチームのエンブレムをプリントしたケースに入れられ、サッカー好きが表れている。部屋にもユニホームや旗を飾っていて、定期購読する雑誌は数種類に及ぶ。涼くんのおばさん曰く、サッカー小僧だ。

「浅見さん」

 携帯を眺めていると、ディスプレイを高橋さんが覗き込む。

「ねぇ、今日はこれからどうするの?」

 高橋さんは涼くんの携帯電話について触れてこない。ただし、それを鞄へ仕舞う動作は目線で追われる。