困難を切り開き未来へ突き進もうとする眼差しを浴び、胸が熱くなる。やっぱりこの人の側に居たい、好きだなぁと感じる。それと同時、少しだけ苦しくもあって。

「涼くんこそ、そうやって素直な気持ちを言ってくれるようになったから心配になるな。も、もちろん涼くんを疑ってる訳じゃないよ?」

「あー、こりゃ堂々巡りだな。高橋は諦めただろ?」

 わたしが恋心に未熟で不安がれば、根気よく付き合ってくれて怒らなくもなった。

「浅見桜子さんは?」

「は? 桜子?」

「涼くんも浅見桜子さんの記憶はあるんでしょ?」

 わたしと過ごした日々の記憶と平行し、本物の浅見桜子さんとの思い出を涼くんは持っている。

「あるけど、別に? 浅見の桜子は俺に興味ねぇぞ? 試合も観に来なかったし」

「……うん」

「んな顔するなってば。浅見の桜子に会ってみるか? お前が彼女と紹介してもいい」

 浅見桜子さんの存在は知っているが、まだ本人と会ったことがなく、お父さんとお母さんにもあれから会えていない。

「会いたい気持ちがない訳じゃないけど、正直なところ怖いの。わたしが存在していた場所に本物の浅見桜子さんがいて、自分は偽物だと感じるのが。お父さん達に忘れられてるのを受け止めきれるのか自信がない」

「お前は偽物じゃねぇ、桜子は桜子だ」

 涼くんの家とわたしの家だった建物が見えてきた。数週間寄り付かないだけで、こんなにも懐かしい。ただいまを言えない環境に無意識で唇を噛む。
 と、涼くんが肩を抱いてきた。大丈夫、大丈夫と擦ってくれる。